育休手当がもらえるのは原則1年ですが、「育休を延長する必要がある」と証明できれば、最大で2年まで育休手当を貰うことができます。
その証明のひとつが、不承諾通知※
※厚生労働省が「不承諾通知」ではなく「入所保留通知」との名称を使うように通達しているので、今後は「入所保留通知」が一般的になるかもしれません。
近年、「不承諾通知が欲しいために認可保育園を希望して、あえて落選する事例が増えている」ことが問題視されており、ニュースなどでも取り上げられています。
一体、何が問題なのでしょうか。
目次
1.育休延長に不承諾通知が必要
育休は原則1年とされており、育休を延長するためには「延長が必要であること」を証明する必要があります。多くの人にとっては、不承諾通知が該当します。
もともと育休を2年あるいは3年まで取れるように制度を整えている会社の場合、育休延長そのものには不承諾通知は必要ありません。
ただし、育休手当を1年経過後も貰い続けるためには不承諾通知が必要になるのです。
育休を2年まで延長するためには、①子が1歳のとき、②1歳6ヵ月のとき、2回のタイミングで不承諾通知を入手してハローワークに提出しなければなりません。
そもそも、「育休は原則1年」とせずに、最初から「育休は2年まで取得可」とすれば済むように思いますが、現状は延長手続きを行わざるを得ない状況にあります。
2.保育園選考における負担増加
まだ保育園が必要ではない家庭であっても、認可保育園に申し込むことになります。
育休手当が1年延長されるか否かは経済的に影響が大きいので、当然のことですね。仮に標準月給が30万円とすると、15万円×12カ月=180万円になりますからね。
保育園の選考は、複雑な点数の計算が求められます。もともと区役所にとっては骨の折れる作業。不承諾通知狙いの申込者が増えると、ますます区役所の事務負担が増大してしまいます。人為的なミス(計算間違い)などが起きる可能性もあります。
3.入所できたはずの児童が入所できない
「絶対に落選するだろう」と思った保育園に入園希望を出していても、内定が取れてしまうこともあります。第1次利用調整で内定してしまった保育園を辞退し、第2次利用調整で不承諾通知を得るというケースもあります。
この場合、もともと保育園に入れるはずだった(本当に入所を希望している)児童が、その保育園に入れなくなってしまうのです。
第1次利用調整で落ちたはずの保育園が、第2次利用調整で再度募集をかけていたとしたら・・・不承諾通知狙いのキャンセルという可能性もあるのです。(多くは転勤による辞退だと思いますが)
もしかしたら入れていたかもしれないと思うと、やるせないですよね。
4.必要な保育園の数が把握できない
不承諾通知狙いの申請なのか、本当に保育園を希望している申請なのか、第三者が判断するのは難しいですよね。心情的にグレーゾーンである可能性もあると思います(保育園に内定したら復帰するつもりだけど、でも子どもと離れたくないし・・・天に運を任せよう・・・みたいな)。
どちらも不承諾になった場合に、数字上は区別がつきません。すると本当に必要な保育園の数を把握できなくなってしまいます。どのくらい保育園を新設すれば良いのかが判明しないと、保育園の増設は難しくなる恐れも。
利用者としても、前年度の内定実績を見ても、いまいち「保育園の入りやすさ」の実態は掴みにくくなってしまいます。
5.現状の解決方法
不承諾通知なしでも育休延長を可能に!
大阪市、京都市など多くの自治体が「入所保留通知書の提出がなくても育児休業等の延長が可能になるように制度を改正して欲しい」と要望を出しています。
地方自治体は「事務的負担の増大・入所できた筈の児童が入所できない・正確な待機児童数の把握に支障が生じている」と感じているのです。
内閣府地方分権改革有識者会議(第85回提案募集券等専門部会)より
厚生労働省の回答
地方自治体からの要望に対して厚生労働省が出した回答は「NO」!
ざっくりと内容をまとめると、以下のとおりです。
①育休は原則1年であり、あくまでも延長することは“例外”
②“例外”である以上、保留決定通知は必要
③保育園申込時に育休延長可能か否かを明記すれば判別可能
「保育園申込時に本当に入所希望か、育休延長希望の人か、分かればええやん?育休が原則1年なのは変えないからね!不承諾通知も必要だからね!」ってことらしいです。
保育園申込時に育休延長希望を明示
厚労省から各自治体に「保育園申込時において『育休延長を希望するか否か』を利用希望者に明記してもらうことで、諸々の問題を解決すべし」とのお達しがなされました。
これを受けて自治体では「保育園申込時において『育休延長を希望するか否か』を明記してください」と案内することになりました。2019年4月入所においては都内23区のうち半数以上が利用希望者に案内したようです。
それでも、「そもそも制度に問題がある!」との考えである区では、「『育休延長を希望するか否か』の明記を求めるのはオカシイ」として、その方針には反対しているようですね。
6.まとめ
あくまでも育休延長は“例外”との姿勢を崩さない厚生労働省。
働き方改革の流れに乗って、「育休は2年まで取って良いよ!早めに切り上げるのも当然OK!みんなの自由だよ!」と言って欲しいものです。
今後どのようになっていくのでしょうか。
子どもを産みやすく、そして働きたい人が働ける社会にしていきたいですね。
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